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給与収入・給与所得・合計所得・課税所得の計算式

給与収入・給与所得・合計所得・課税所得の計算式と関係性

税制を理解する上で、これらの用語の違いと計算方法を正確に把握することが非常に重要です。以下、それぞれの定義と計算式を詳しく説明します。

1. 給与収入(年収・総支給額)

給与収入とは、1年間に雇用主から支払われた給与・賞与の総額を指します。いわゆる「年収」や「総支給額」のことで、税金や社会保険料が天引きされる前の金額です。

給与収入 = 1年間の給与・賞与の総支給額

具体例:

  • 月給12万円 × 12ヶ月 = 年間144万円
  • 月給10万円 × 12ヶ月 + 賞与6万円 = 年間126万円

注意点: 通勤交通費は、月額15万円までは給与収入に含まれません(所得税・住民税の非課税枠)。


2. 給与所得控除

給与所得控除とは、給与収入から自動的に差し引かれる経費相当額のことです。サラリーマンやアルバイトには、自営業者のような必要経費の計上が認められない代わりに、給与収入に応じて一定額が控除されます。

2025年(令和7年)以降の給与所得控除額:

給与収入給与所得控除額
162.5万円以下65万円(最低保障額)
162.5万円超~180万円以下給与収入 × 40% - 10万円
180万円超~360万円以下給与収入 × 30% + 8万円
360万円超~660万円以下給与収入 × 20% + 44万円
660万円超~850万円以下給与収入 × 10% + 110万円
850万円超195万円(上限)

重要: 2025年の税制改正により、最低保障額が55万円から65万円に引き上げられました


3. 給与所得

給与所得とは、給与収入から給与所得控除を差し引いた金額です。

給与所得 = 給与収入 - 給与所得控除

具体例:

例1: 給与収入100万円の場合

給与所得 = 100万円 - 65万円 = 35万円

例2: 給与収入150万円の場合

給与所得 = 150万円 - 65万円 = 85万円

例3: 給与収入200万円の場合

給与所得控除 = 200万円 × 30% + 8万円 = 68万円
給与所得 = 200万円 - 68万円 = 132万円


4. 合計所得金額

合計所得金額とは、すべての種類の所得を合計した金額です。給与所得だけでなく、事業所得、不動産所得、配当所得、雑所得などがあれば、それらを合算します。

合計所得金額 = 給与所得 + 事業所得 + 不動産所得 + 配当所得 + 雑所得 + ?

給与所得のみの場合:

合計所得金額 = 給与所得 = 給与収入 - 給与所得控除

具体例:

例1: 給与収入のみ150万円の大学生

給与所得 = 150万円 - 65万円 = 85万円
合計所得金額 = 85万円

例2: 給与収入120万円 + アフィリエイト収入(雑所得)30万円のパート主婦

給与所得 = 120万円 - 65万円 = 55万円
雑所得 = 30万円(経費を差し引いた後)
合計所得金額 = 55万円 + 30万円 = 85万円


5. 課税所得(課税される所得金額)

課税所得とは、合計所得金額から各種所得控除(基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除など)を差し引いた後の金額です。この金額に税率を掛けて、実際の所得税や住民税が計算されます。

課税所得 = 合計所得金額 - 所得控除の合計額

主な所得控除:

  • 基礎控除(所得税:最大95万円、住民税:43万円)
  • 配偶者控除・配偶者特別控除
  • 扶養控除・特定扶養控除・特定親族特別控除
  • 社会保険料控除(健康保険・厚生年金・国民年金など)
  • 生命保険料控除、地震保険料控除
  • 医療費控除、寄附金控除(ふるさと納税など)

具体例:

例1: 給与収入150万円の大学生(社会保険加入なし、その他控除なし)
大学生の場合、国民年金は卒業後、自分で払っても良いし親が払っても良い。最悪払わなくても借金ではないので無理やり徴収されることは無い。但し年金の受給金額は満額より下がる。(ここは考え方次第。親が支払うと親の所得が減るので節税にはなる。)

1. 給与所得:

給与所得 = 150万円 - 65万円 = 85万円

2. 合計所得金額:

合計所得金額 = 85万円

3. 所得税の課税所得(2025年):

基礎控除 = 95万円(合計所得132万円以下の場合)
課税所得 = 85万円 - 95万円 = -10万円 → 0円(マイナスは0円)
所得税 = 0円

4. 住民税の課税所得(2026年度):

基礎控除 = 43万円
課税所得 = 85万円 - 43万円 = 42万円
所得割 = 42万円 × 10% = 42,000円
均等割 = 5,000円(東京23区の場合)
住民税合計 = 42,000円 + 5,000円 = 47,000円

例2: 給与収入150万円の大学生(国民年金16,980円×12ヶ月=203,760円を納付)

1. 給与所得・合計所得金額:

合計所得金額 = 85万円

2. 所得税の課税所得(2025年):

社会保険料控除 = 203,760円
基礎控除 = 95万円
所得控除合計 = 203,760円 + 950,000円 = 1,153,760円
課税所得 = 850,000円 - 1,153,760円 = -303,760円 → 0円
所得税 = 0円

3. 住民税の課税所得(2026年度): (住民税は、前年の所得を元に翌年課税される)

社会保険料控除 = 203,760円
基礎控除 = 43万円
所得控除合計 = 203,760円 + 430,000円 = 633,760円
課税所得 = 850,000円 - 633,760円 = 216,240円
所得割 = 216,240円 × 10% = 21,624円
均等割 = 5,000円
住民税合計 = 21,624円 + 5,000円 = 26,624円


合計所得と給与収入は同じか?

答え: いいえ、異なります。

  • 給与収入: 給与・賞与の総支給額(年収)
  • 合計所得金額: 給与収入から給与所得控除を差し引いた「給与所得」に、その他の所得を加えた金額

給与所得のみの場合の関係式:

合計所得金額 = 給与収入 - 給与所得控除

具体例で比較:

給与収入給与所得控除給与所得(=合計所得金額)
100万円65万円35万円
123万円65万円58万円 (扶養親族)
150万円65万円85万円
160万円65万円95万円 (所得税非課税)
200万円68万円132万円

まとめ: 計算の流れ

①給与収入(年収・総支給額)

②給与収入 - 給与所得控除 = 給与所得

③給与所得 + その他の所得 = 合計所得金額

④合計所得金額 - 所得控除の合計 = 課税所得

⑤課税所得 × 税率 = 所得税額または住民税額

重要ポイント:

  • 扶養控除や配偶者控除の判定は、「給与収入」ではなく「合計所得金額」で行われます。
  • 2025年改正後の扶養親族等の所得要件は「合計所得58万円以下」(給与収入のみなら123万円以下)です。
  • 103万円の壁」は「123万円の壁」に、「160万円の壁」(所得税非課税)が新設されました。

これらの用語と計算式を正確に理解することで、税金の仕組みや各種控除の適用条件を正しく把握できます。

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