生成AI

アリババクラウド通義千問Qwenの最新動向|Qwen3.8とQwen 4【2026年10月】

2024年2月4日

2023年12月、アリババクラウドが「Qwen-72B」を公開したとき、720億パラメーターのオープンソースLLMは「巨人」と呼ばれていました。GPT-3.5やGPT-4に一部の指標で並んだことが、大きなニュースになった時代です。

それから約3年。Qwen(中国語名:通義千問)は2026年だけで4つの世代を重ね、現在のフラッグシップは2.4兆パラメーターと、当時の約33倍の規模になりました。しかもその重みまで無料で公開され、世界で最もダウンロードされるオープンモデル群になっています。

「名前は聞くけれど、今どれが最新なのか分からない」「中国製のAIを業務で使っていいのか判断できない」という方も多いはずです。今回は、2023年の記事を2026年10月27日時点の情報で全面的に書き直しました。

この記事でわかること

  • 2023年のQwen-72Bから現在までの進化の流れ
  • 現行フラッグシップ「Qwen3.8-Max」の規模と特徴
  • パソコンやサーバーで動かせる小型モデルの選び方
  • 音声・画像モデルの最新ラインナップ
  • 次世代「Qwen 4」の発表内容と、まだ分かっていないこと
  • 中小企業が試すときの進め方と注意点

先に結論

  • 現行の最上位は2026年8月公開の「Qwen3.8-Max」。2.4兆パラメーターで、重みも公開された
  • 次世代「Qwen 4」は学習中と公式発表済み。ただし10月27日時点で公開日は未発表
  • 業務で試すなら、APIの小型版か、自社で動かせる「Qwen3.8-27B」から小さく始めるのが現実的

3年で別物になったと考えてOK。今のQwenは「安くて強いオープンモデル」の代表格です

1. Qwenは3年で「中国の一モデル」から世界最大のオープンモデル群になった

Qwenの進化は2026年に一気に加速し、半年で4世代が登場しました。2023年12月のQwen-72B公開後、2025年4月にQwen3、2026年2月にQwen3.5が出てからは、ほぼ2か月おきに新世代が投入されています。

時期主な出来事位置づけ
2023年12月Qwen-72B・Qwen-1.8B・Qwen-Audioを公開(旧記事の内容)720億パラメーターが当時の最大
2025年4月Qwen3ファミリー公開思考モードの切り替えに対応
2026年2月Qwen3.5(オープン版3,970億パラメーター)公開エージェント用途を強化、対応言語201に拡大
2026年4月Qwen3.6-Plus(API)、Qwen3.6-27B(オープン)コーディング・エージェント性能を強化
2026年5〜6月Qwen3.7-Max・Plus(API専用)長時間のエージェント作業向け
2026年8月Qwen3.8-Max(2.4兆パラメーター)発表、重みも公開現行のフラッグシップ
2026年9月Qwen 4の学習中を公式発表公開日は未定

提供形態は「無料で重みを配るオープン版」と「APIで使う有料版」の二本立てが定着しました。同じ世代でも、APIでしか使えないモデルと、ダウンロードして自社サーバーで動かせるモデルが混在しているため、名前だけで判断しないことが大切です。

補足:アリババクラウドとは

アリババクラウド(阿里雲)は、アリババグループのクラウド事業部門です。サーバーやストレージなどのインフラ(IaaS)から、AI開発基盤(PaaS)、業務アプリ(SaaS)までを提供しています。2026年9月時点で世界31リージョン・107のアベイラビリティゾーンを運営し、今後12か月でトルコ、フィンランド、オランダに初のリージョンを開設する計画です。Qwenは、同社のAI基盤「Model Studio(百錬)」からAPIとして利用できます。

「Qwen」と一口に言っても、世代と提供形態で中身がまったく違います

2. 現行の最上位Qwen3.8-Maxは2.4兆パラメーター、重みまで公開された

Qwen3.8-Maxは2026年8月3日にAPI提供が始まった、アリババ史上最大のモデルです。総パラメーターは2.4兆で、1トークンの処理ごとに動くのはそのうち約950億(全体の約4%)に限られます。必要な「専門家」だけを呼び出すMoE(Mixture of Experts)という仕組みで、巨大さと処理コストを両立させています。

旧記事のQwen-72Bと比べると規模は約33倍

項目Qwen-72B(2023年12月)Qwen3.8-Max(2026年8月)
総パラメーター720億2.4兆(稼働は約950億)
扱える文章量(コンテキスト)—100万トークン
入力テキストテキスト・画像・動画(API版)
重みの公開ありあり(独自ライセンス)

10日以上、人の手を借りずにプログラムを書き続けられる

Qwen3.8-Maxの売りは、目標を渡すと長期間にわたって自律的に作業を進められる点です。アリババの発表では、空のフォルダーから10日以上にわたり自律的にコーディングを続け、約16日間の運用でリポジトリに265件のコミットと127件のプルリクエストが積み上がったとされています。

「Max級」のQwenが重みまで公開されたのは今回が初めてです。8月12日にHugging FaceとModelScopeで「Qwen3.8-2.4T-A95B」として公開されましたが、完全版の容量は約4.9TBあり、動かせるのは実質的にデータセンター規模の設備に限られます。

API料金は100万トークンあたり入力2ドル・出力6ドル

一般の企業がQwen3.8-Maxを使うなら、APIでの従量課金が現実的な選択肢です。料金は100万トークンあたり入力2ドル・出力6ドルで、大量処理向けの「Qwen3.8-Flash」は入力0.15ドルからとさらに安く設定されています。

最上位モデルは「借りて使う」もの。自社で動かすのはほぼ不可能なサイズです

3. 手元で動かすならQwen3.8-27B、ライセンス面でも扱いやすい

旧記事で紹介した「Qwen-1.8B」のような軽量モデルの役割は、今は27Bや9Bクラスが担っています。2023年当時は「3GBのGPUメモリで動く」ことが話題でしたが、現在は少し大きめのモデルでも、量子化(精度を落として容量を圧縮する手法)によって一般的なPCで動かせるようになりました。

モデル規模ライセンス動かす環境の目安
Qwen3.8-27B270億(画像・動画も入力可)Apache 2.04bit量子化でVRAM 24GBのGPU1枚
Qwen3.5-9B90億Apache 2.0メモリ16〜24GB級のPC
Qwen3.8-Flash-Next総1,800億(稼働約60億)Qwen Community License 1.0GPUに加え大容量のシステムメモリが必要

企業が製品やサービスに組み込むなら、Apache 2.0で提供されるQwen3.8-27Bが最も扱いやすい選択肢です。Apache 2.0はユーザー数や売上の上限がなく、改変や再配布も認められています。社外にデータを出さずにAIを使いたい場合の候補になります。

一方、Flash-Nextや2.4T版は独自ライセンスで、一定規模を超える商用利用には条件があります。月間アクティブユーザー1億人や月間売上2,000万ドルを超えるとモデル名の表示義務が生じるほか、AIを有料サービスとして提供する事業者は別途ライセンスが必要になる場合があります。中小企業の社内利用で問題になることはまずありませんが、自社サービスに組み込む前には必ずライセンス原文を確認してください。

自社で動かすなら27B一択。ライセンスで悩まずに済むのが大きな利点です

4. 音声・画像も世代交代し、同時通訳と高速画像生成が加わった

旧記事の「Qwen-Audio」は、今では音声生成と同時通訳のモデルへと発展しています。2026年9月のアリババクラウド年次イベント「Apsara Conference」では、音声・画像分野の新モデルがまとめて発表されました。

モデル分野特徴
Qwen3.8-LiveTranslate同時通訳遅延を2.8秒から2.3秒へ約20%短縮
Qwen-Audio-3.1-TTS-Next音声生成台本からオーディオブックや映像向けの音響まで作成
Qwen3.8-Omni-Flash音声・映像の理解最大1時間の音声付き動画を1回で読み込める(API専用)
Qwen-Image-2.1画像生成・編集9月20日公開。70億パラメーターで生成と編集を1つに統合
Qwen-Image-2.1-Turbo画像生成・編集10月9日公開。わずか8ステップで生成できる高速版

旧記事で触れた画像理解の「Qwen-VL」の流れは、今では主力モデル自体に組み込まれています。Qwen3.8世代では、27BやAPI版のMaxがはじめから画像や動画を読み込めるため、画像専用モデルを別に用意する必要が減りました。

画像生成モデルは、商用利用の条件がモデルごとに異なる点に注意が必要です。Qwen-Image-2.1とTurboは研究用ライセンスで公開されており、2025年の旧版(Apache 2.0)と同じ感覚で商用利用するのは避けてください。商用で使うなら、API版の「Qwen-Image-2.1-Pro」を選ぶのが確実です。


5. ダウンロードは30億超、派生モデル数はMetaの2.6倍に

Qwenは2026年、MetaのLlamaやGoogleのモデルを抜いて世界で最も使われるオープンモデル群になりました。アリババの発表では、過去6か月の全世界ダウンロード数が30億を超え、公開モデルは460以上、派生モデルは30万を超えています。

第三者のHugging Faceの集計でも、Qwenの存在感は際立っています。同社が2026年8月に公表したレポートによると、2026年1〜7月のQwen関連のダウンロードは約20億4,500万回で、Googleの約4億1,800万回、Metaの約2億2,700万回を大きく上回りました。Qwenをもとに作られた派生モデルは15万1,448件で、Meta全体の2.6倍に達しています。

消費者向けアプリ「Qwen」も、中国国内で上位の利用者数を抱えています。QuestMobileの調査では、2026年5月時点の月間アクティブユーザーは1億6,700万人で、ByteDanceの「豆包(Doubao)」に次ぐ2位でした。

パナソニックの中国法人では会議録作成の時間を80%削減

企業での活用例として、アリババはパナソニックデジタル(上海)の事例を紹介しています。Qwenを使って製造・サプライチェーン・管理部門向けのAIエージェントを構築し、議事録の自動作成で文書作成時間を80%削減、契約書の比較チェックでは効率を10倍に高めたとしています。

世界中の開発者がQwenを土台に使っている、という事実は選定時の安心材料になります

6. 次世代Qwen 4は学習中、公開日は10月27日時点で未発表

アリババは2026年9月22日、次世代モデル「Qwen 4」を学習中だと公式に発表しました。Apsara Conferenceの壇上では、Max・Plus・Flash・27Bの4つのラインナップ名が示されましたが、性能や価格、公開日は明らかにされていません。

さらに先のQwen 4.5とQwen 5は、5兆〜10兆パラメーター規模を目指すと発表されています。現行のQwen3.8-Max(2.4兆)の2〜4倍に相当する規模です。

Qwen 4の設計は、8月26日に公開された「Qwen3.8-Flash-Next」ですでに先行公開されています。アリババ自身がモデルの説明で、Qwen 4に使うアーキテクチャの早期プレビューだと位置づけています。オープンソースの推論ソフト(llama.cppやvLLMなど)でも、Qwen 4に向けた対応が進んでいます。

注意:Qwen 4の公開時期は噂の段階

SNSや海外コミュニティでは「10月末に公開」との情報が出回り、正体不明のモデルが評価サイトで匿名テストされているとの報告もあります。ただし、いずれもアリババは認めておらず、10月27日時点で公式の公開日・価格・重みは発表されていません。導入計画は、現行のQwen3.8世代を前提に立ててください。

Qwen 4は近いうちに出そうですが、待つより今あるモデルで試すほうが得策です

7. 中国勢の競争は激化し、DeepSeekやテンセントも大型モデルを公開

中国では、アリババ以外の企業も1兆パラメーター級のオープンモデルを相次いで公開しています。旧記事の結論で「テンセントなども生成AIを開発している」と書きましたが、2026年はその競争がさらに本格化しました。

企業主なモデル公開時期特徴
アリババQwen3.8-Max2026年8月2.4兆パラメーター、重みも公開
DeepSeekDeepSeek-V4-Pro / Flash2026年4月Proは1.6兆パラメーター、100万トークン対応
テンセント混元(Hunyuan)Hy4 プレビュー2026年8月7,700億パラメーター、Apache 2.0で公開
Moonshot AIKimi K3.1 Pro2026年10月アリババが出資するスタートアップ

中国勢の共通点は、高性能なモデルを重みごと公開し、APIも低価格で提供していることです。OpenAIやGoogle、Anthropicが最上位モデルをAPI中心で提供するのに対し、オープン路線で開発者を囲い込む戦略をとっています。利用者にとっては、選択肢が増え価格が下がるという恩恵があります。


8. 中小企業が試すなら、APIか27Bで小さく始めるのが現実的

中小企業がQwenを試すなら、用途に合わせて2つの入口から選ぶのが近道です。まずは小さな業務で効果を確かめ、そのうえで本格導入を判断しましょう。

試し方の手順

  1. お試し:ブラウザ版の「Qwen Chat」で、日本語の文章作成や要約の品質を確かめる
  2. 業務に組み込む:大量処理はQwen3.8-Flash、難しい作業だけQwen3.8-MaxをAPIで使い分ける
  3. 社外にデータを出したくない:Qwen3.8-27BをGPU搭載PCや社内サーバーで動かす

APIで使う場合は、データがどこで処理されるかを事前に確認しておく必要があります。顧客情報や機密情報を送る前に、利用するリージョン(国際版はシンガポールなど)と利用規約、自社の情報管理規程を必ず照らし合わせてください。機密性の高い業務は、自社内で動かせる27Bを使えばこのリスクを避けられます。

ChatGPTやClaudeなどと併用し、業務ごとに使い分けるのがおすすめです。Qwenは料金の安さとオープン性が強みなので、大量の定型処理や社内専用AIの土台として組み込むと費用対効果が出やすくなります。

どの業務にAIを使えば効果が出るか、社内のルールをどう整えるかで迷っている場合は、導入支援の専門家に相談するのも一つの方法です。

まずは無料のチャット版で日本語の出来を確かめるところから始めてみましょう

よくある質問

Q. Qwenの読み方は?「通義千問」とは別物ですか?

一般的に「クウェン」または「キューウェン」と読みます。「通義千問(Tongyi Qianwen)」は中国語での名称で、同じモデル群を指しています。

Q. 2026年10月時点で一番新しいQwenはどれですか?

言語モデルの最上位は、2026年8月公開の「Qwen3.8-Max」です。9月にはコーディング向けに再調整した「Qwen3.8-Max-0902」も追加されています。次世代のQwen 4は学習中で、公開日は未発表です。

Q. 無料で使えますか?

チャット版の「Qwen Chat」は無料で試せます。オープン版のモデルも無料でダウンロードできますが、動かすためのPCやサーバーの費用はかかります。APIは使った分だけの従量課金です。

Q. 日本語は使えますか?

使えます。Qwen3.5以降は201の言語・方言に対応しています。ただし、文章の自然さは用途によって差があるため、実際の業務文書で試してから判断してください。

Q. 2023年の記事で紹介されたQwen-72BやQwen-1.8Bは今も使えますか?

Hugging Faceには残っていますが、性能は現行モデルに大きく劣ります。これから使うなら、Qwen3.8-27BやQwen3.5-9Bなど新しい世代を選んでください。


まとめ

まとめ

  • Qwenは2026年に半年で4世代を重ね、現行の最上位はQwen3.8-Max(2.4兆パラメーター)
  • Max級として初めて重みが公開されたが、実用的にはAPIで使うのが現実的
  • 自社で動かすなら、Apache 2.0のQwen3.8-27Bが扱いやすい
  • 音声は同時通訳・音声生成へ、画像は8ステップの高速生成へと進化
  • Qwen 4は学習中で、公開日はまだ発表されていない

2023年に「オープンソースLLMとして最高性能」と言われたQwen-72Bは、今では入門用にも物足りない規模になりました。それだけAIの進化は速く、半年前の常識がすぐに古くなります。新しいモデルを追いかけ続けるよりも、まずは今あるモデルを1つの業務で試し、効果を確かめることが大切です。

Qwen 4を待たずに、今日から小さく試すのがいちばんの近道です

参考リンク

※本記事の情報は2026年10月27日時点のものです。Qwenは数か月ごとに新モデルが公開されるため、最新情報は公式発表をご確認ください。
※ベンチマークや自律コーディングの実績は、いずれもアリババ自身の発表に基づく数値で、第三者による再現検証は限られています。
※ダウンロード数のうち「30億超」はアリババ発表(全プラットフォーム合計・過去6か月)、「約20億4,500万回」はHugging Face上のみの集計(2026年1〜7月)で、集計期間と範囲が異なります。
※アプリの月間アクティブユーザー数はQuestMobileによる中国国内のAIネイティブアプリの推計値です。
※API料金は米ドル建てで、為替やリージョン、入力トークン量によって変動します。
※テンセント混元Hy4プレビューの仕様は、海外の比較サイトの情報に基づきます。

サイト内検索

-生成AI