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Amazonに頼らないネット販売術 |ブルーミングデールズに学ぶ

2026年10月1日

西武渋谷店が閉店したので、最近のアメリカの百貨店事情をちょっと調べてみました。
「ネット販売を伸ばしたいけれど、Amazonに出すと価格競争に巻き込まれそう」「売上の1割以上を手数料で払ってまで出す意味があるのか」。自社の商品をネットで売ろうとすると、多くの中小企業がこの分かれ道で迷います。

Amazonのような大型モールは集客力が圧倒的です。その一方で、同じ商品や似た商品が横一列に並ぶため、勝負はどうしても「価格」と「配送の速さ」になります。体力のある大手と同じ土俵に立つほど、小さな店は苦しくなります。

そこで参考になるのが、アメリカの老舗百貨店ブルーミングデールズ(Bloomingdale's)です。米国では百貨店の閉店や経営破綻が相次いでいますが、ブルーミングデールズは2026年に入っても売上の伸びが2ケタに達し、ネット販売は売上の約4割を占めています。しかも、Amazonと正面からは戦っていません。

今回は、ブルーミングデールズが「Amazonに頼らずにネットで売れている理由」を最新のデータから読み解き、日本の中小企業や地域の専門店がすぐに取り入れられる形に落とし込みます。

ブルーミングデールズに学ぶ Amazonに頼らないネット販売術

この記事でわかること

  • 米国の百貨店が苦戦するなか、ブルーミングデールズだけが伸びている理由
  • Amazonと「同じ土俵で戦わない」という考え方
  • ネットでも「人」が接客する仕組みと、その効果
  • 実店舗をネット販売のエンジンに変える方法
  • 値引きに頼らずに選ばれるための「体験」のつくり方
  • 中小企業がAmazonに出すべき商品・出さないほうがいい商品の見分け方

先に結論

  • Amazonの強み(安さ・速さ・品数)の土俵では戦わない
  • 「ここでしか買えない品ぞろえ」と「人による接客」をネットに持ち込む
  • 実店舗・自社EC・常連客との関係をつなげて、値引きではなく体験で選ばれる
Amazonに勝とうとするのではなく、「Amazonでは手に入らない商品と接客」で勝負する。それがブルーミングデールズのやり方です。


1. ブルーミングデールズとは?米国百貨店で一人勝ちに近い理由

ブルーミングデールズは1861年創業、ニューヨーク・マンハッタンの59丁目に本店を構える高級百貨店です。米国最大の百貨店グループであるメイシーズ社の傘下にあります。

2026年時点の店舗は、総合百貨店が31店、アウトレットが25店、品ぞろえを絞った小型店「Bloomie's(ブルーミーズ)」が4店です。全米に数百店を構える百貨店チェーンと比べると、かなり小さな規模です。

ところが業績は、米国の百貨店業界でも突出しています。

期間既存店売上の伸び(前年比)ポイント
2025年度(通期)+7.4%年末商戦は過去最高
2026年度 第1四半期+10.2%7四半期連続の増収
2026年度 第2四半期+11.3%第2四半期として154年の歴史で最高の売上

同じ時期、親会社の主力であるメイシーズ本体の既存店売上は+1.1%にとどまり、約150店の閉鎖を進めています。高級百貨店サックス・フィフス・アベニューやニーマン・マーカスを抱えるサックス・グローバルは、2026年1月に経営破綻しました。そうしたなかでの2ケタ成長です。

注目したいのはネット販売です。ブルーミングデールズでは、ネット経由の売上が全体の38%を占めています。米国はAmazonの本拠地であり、ネット通販の競争が世界でもっとも激しい市場です。その米国で、Amazonに出店することなくネット販売を大きく育てています。


2. なぜAmazonと同じ土俵で戦わないのか

Amazonの強みは「安さ」「配送の速さ」「品数の多さ」です。この3つで正面から勝負すれば、世界中のほとんどの小売業者は勝てません。

ブルーミングデールズのオリヴィエ・ブロンCEOは、自社の得意分野を「プレミアムからラグジュアリー」、つまり「少し背伸びした価格帯から高級品まで」と説明しています。最初から、Amazonが強い価格帯とは別の場所を選んでいるわけです。

比較項目Amazonブルーミングデールズ
勝負の軸安さ・配送の速さ・品数品ぞろえの選び方・接客・ブランドの格
高級ブランドほとんど扱えない主力商品として扱う
おすすめの仕方アルゴリズムスタイリスト・販売員が提案
価格の考え方比較されて安い方が売れる値引きを減らし、体験で選ばれる
実店舗ほぼなしネット販売を支える土台

もう一つの理由は、高級ブランドそのものがAmazonでの販売を嫌っていることです。ルイ・ヴィトンやディオールを傘下に持つLVMHの財務責任者は、Amazonの事業は自社のブランドに合わないと投資家の前で明言しています。2017年には欧州連合の最高裁判所が、高級ブランドが販売店に対してAmazonなど外部モールでの販売を禁止することを認めました。2019年には、ナイキもAmazonとの直接取引をやめています。

つまりブルーミングデールズは、「同じ商品をAmazonより高く売っている」のではありません。「Amazonでは買えない商品を売っている」のです。

日本のネット販売の現状

  • 経済産業省の調査では、2024年の日本の消費者向けネット販売(物販)は15兆2,194億円、物販全体に占める割合(EC化率)は9.78%
  • まだ9割は実店舗などネット以外で売られており、伸びる余地は大きい
  • Amazonの大口出品は月額4,900円の固定費に加え、商品カテゴリーごとに売上のおおむね8〜15%台の販売手数料がかかる
安さと速さでAmazonに挑むのは消耗戦です。まずは「自分の店はどこで勝負するのか」を決shめるところから始めましょう。


3. 方法1:「ここでしか買えない」品ぞろえをつくる

ブルーミングデールズは、ヴァレンティノ、バーバリー、クロエ、ボッテガ・ヴェネタなどの高級ブランドを次々に導入しています。ブロンCEOによると、2026年2月までの1年間で、新たに増えたブランドの売り場はおよそ3,300か所にのぼります。これは店舗の数ではなく、「どのブランドを、どの店で扱うか」という組み合わせの数です。新しく導入したブランドに加えて、既存ブランドを扱う店舗を広げた分も含まれるとみられます。2026年に入ってからも、ドリス・ヴァン・ノッテンなどを加え、シャネルの高級宝飾・時計の取り扱いを広げています。

有名ブランドだけではありません。ブロンCEOは、まだ知られていない新しいブランドを育てる「発見の場」になることも重視しています。実際に、ネット直販から始まった米国の衣料ブランドBYLTは、2026年に卸売を始めるにあたって、ブルーミングデールズを最初の取引先に選びました。

さらにネット上では、外部のブランドが直接出品できる仕組みを2022年から運営しています。ここで売れ行きを試し、手応えのあったブランドを実店舗に迎え入れます。例えば重みのある毛布のブランドは、ネットでの販売実績をもとに一部の店舗への採用が決まりました。

中小企業ならこう応用する

  • 自社オリジナル商品、地域の生産者と組んだ限定品、少量生産品など「型番で検索しても出てこない商品」を主力にする
  • 店主やスタッフの目利きで選んだ「セレクト」を打ち出し、選んだ理由を商品ページに書く
  • 新商品はまずネットや予約販売で少量ずつ試し、反応の良いものだけを店頭に並べる
Amazonで型番検索して同じ商品が見つかるなら、価格で比べられてしまいます。「ここにしかない」商品を一つでも多く持つことが出発点です。


4. 方法2:ネットでも「人」が接客する

Amazonでは、おすすめ商品をアルゴリズムが選びます。ブルーミングデールズは逆に、ネットでも人が接客します。

リモート販売員

  • リモート販売員:サイトを見ている客とチャットで会話し、好みを聞きながら購入まで案内します。その後も連絡を続けて、次の買い物につなげます。
  • スタイリストのオンライン対応:近くに店がない客にも、スタイリストがコーディネートをオンラインで提案し、新作が入ると写真をメッセージで送ります。何年、何十年と同じスタイリストに付いている客もいます。
  • パーソナルショッパーの増員:90人のパーソナルショッパーを抱え、1人あたり年間150万ドル(1ドル150円換算で約2億2,500万円)を超える売上をあげています。

小型店のBloomie'sでも、販売員全員がスタイリストとして研修を受け、近くの店や本店の在庫まで取り寄せられるデジタル販売ツールを持っています。

高い買い物や、自分に合うか迷う商品ほど、人は「誰から買うか」を大事にします。ここは、アルゴリズム中心のAmazonがもっとも苦手とする部分です。

オンラインスタイリスト

中小企業ならこう応用する

  • LINE公式アカウントやサイト上のチャットで「サイズ」「使い方」「贈り物選び」の相談を受け付ける
  • 高単価の商品や相談が必要な商品から、ビデオ通話での接客を予約制で始める
  • 新商品が入ったら、過去に買ってくれた客へ店主から個別に写真を送る
  • 夜間や休日の一次対応はAIチャットに任せ、詳しい相談は人が引き継ぐ
小さな店こそ、店主の顔が見えることが武器になります。ネットの向こうにも「相談できる人」がいることを伝えましょう。

5. 方法3:実店舗をネット販売のエンジンにする

ネット販売を伸ばすために実店舗を減らす、という考え方もあります。ブルーミングデールズは反対です。ブロンCEOは「店舗が強いほど、ネットも強くなる」と話しています。

その証拠に、ブルーミングデールズは総合百貨店を出していないテキサス州や太平洋岸北西部でも、ネット販売が好調だといいます。店舗で築いたブランドの知名度と信頼が、店のない地域のネット売上を引っ張っているわけです。

店舗とネットをつなぐ仕組みも整えています。

  • 会員プログラム「Loyallist」:無料で入会でき、店舗でもネットでも、支払方法に関係なくポイントが貯まります。会員は金額に関係なく送料無料です。
  • 店舗在庫とネットの連携:外部サービスと組み、ブランドの自社サイトからブルーミングデールズ近隣店の在庫を確認して、当日配送や店舗受け取りができるようにしています。

中小企業ならこう応用する

  • 来店客に会員登録やLINE登録をしてもらい、店舗とネットで共通のポイントや特典を用意する
  • 自社ECで「店舗受け取り」を選べるようにし、受け取りのついでに店で接客する
  • Googleビジネスプロフィールに商品・入荷情報・自社ECへのリンクを載せ、地図検索からネット購入へつなげる
  • 商品ページに店舗の写真やスタッフの紹介を載せ、「実在する店」の安心感を伝える
実店舗はネット販売のライバルではなく、信頼を生む場所です。店に来てくれた人を、ネットでも買ってくれる常連さんに育てましょう。


6. 方法4:値引きではなく「体験」で選ばれる

Amazonの土俵では、価格を比べられて安いほうが売れます。ブルーミングデールズは、この価格比較から抜け出すために「体験」を売っています。

上顧客向けには、ディオールのニューヨーク店での貸切訪問、ブルガリと行くシチリア旅行、ラリックによるパリでの食事会などを実施してきました。2026年は大型の広告キャンペーンを4本展開し、顧客向けイベントを400回開く計画です。

その結果、2019年と比べて値引き販売を大きく減らしたといいます。ブロンCEOは、客との関係が深まれば、値引きよりも商品と体験に関心が向くようになると説明しています。

値引きに頼り続ける危険

  • セールのたびに買う客が増え、定価で売れにくくなる
  • 利益が減り、接客や商品開発に回すお金がなくなる
  • 「安さ」でしか選ばれない店は、もっと安い店が現れた瞬間に客を失う

中小企業なら、大がかりな旅行企画は必要ありません。新作の内覧会、常連客向けの少人数ワークショップ、生産者を招いた試食会、オンラインでの限定ライブ販売など、規模に合った体験で十分です。大切なのは「割引」ではなく「特別扱い」で応えることです。

値引きは一番まねされやすい販促です。常連さんには、安さではなく「ここでしか味わえない時間」を返しましょう。

7. 方法5:見せ方の主導権を持てる販路を選ぶ

ブルーミングデールズは、ネット上の外部出品を3つの型で運営しています。高級ブランドが自分で売り場を管理する「eコンセッション」、売れ筋以外の商品を広げて需要を試す型、そして新興ブランドを育てる型です。

eコンセッションとは

  • 百貨店のサイトの中に、ブランドごとの専用売り場を設ける仕組み
  • 価格や商品写真、売り場のデザインはブランド自身が決める
  • 日本の百貨店の「売場貸し(消化仕入・テナント)」をネットに持ち込んだ形
  • Amazonの通常出品はブランドごとに区切られておらず、見せ方も選べない点が大きな違い

高級ブランドがAmazonを避け、ブルーミングデールズを選ぶのは、自分たちの世界観や価格を守れるからです。中小企業にとっても、この視点は大切です。

Amazonに出品すると、商品ページの作り方や価格の見せ方はAmazonのルールに従うことになります。一方、自社ECであれば、デザインも価格も、商品にまつわるストーリーも自分で決められます。こだわりの商品ほど、主導権を持てる場所で売るほうが価値が伝わります。


8. 中小企業が明日から始める5つのステップ

ここまでの内容を、中小企業がすぐに取りかかれる手順にまとめます。

進め方の手順

ステップやること使えるツールの例
1. 商品の仕分け自社の商品を「Amazonでも買える商品」と「ここでしか買えない商品」に分ける商品台帳、型番検索
2. 本拠地づくり「ここでしか買えない商品」を自社ECに集め、選んだ理由やつくり手の話を載せるShopify、STORES
3. 接客の窓口相談を受ける窓口をつくり、店主やスタッフが対応するLINE公式アカウント、チャット、予約制ビデオ通話
4. 店舗との連携来店客の登録、店舗受け取り、共通特典で店とネットをつなぐ会員アプリ、Googleビジネスプロフィール
5. 体験の設計セールの代わりに、常連客向けの体験イベントを定期的に開く内覧会、ワークショップ、ライブ販売

Amazonに出すべきか?判断の分かれ目

  • Amazonに向いている商品:型番で探される既製品、消耗品、価格以外で差がつきにくい商品
  • 自社ECに集中したほうがいい商品:オリジナル商品、少量生産品、説明や相談が必要な商品、ブランドの世界観が大事な商品
  • Amazonを使う場合も、売上をAmazonだけに頼らず、自社ECを「本拠地」として育てる

9. よくある質問

Amazonには一切出さないほうがいいのですか?

そうとは限りません。型番で探される既製品や消耗品は、Amazonの集客力を活かしたほうが売れることも多いです。問題は「Amazonだけに頼ること」です。手数料やルールの変更、価格競争の影響をまともに受けるため、オリジナル商品やこだわりの商品は自社ECに集め、そちらを本拠地として育てるのがおすすめです。

小さな店でもネットで接客できますか?

できます。最初から全商品に対応する必要はありません。LINE公式アカウントで相談を受け付ける、高単価の商品だけビデオ通話の予約枠を設けるなど、手の届く範囲から始めてください。夜間や休日の一次対応をAIチャットに任せる方法もあります。

自社ECは集客が難しいのでは?

その通りで、モールと違ってお客様を自分で連れてくる必要があります。まずは来店客や既存の常連客に登録してもらうことから始め、Googleビジネスプロフィールの整備、検索広告、SNS、Youtue、検索エンジン対策(SEO)を組み合わせて集客します。

値引きをやめたら売上が落ちませんか?

いきなりすべてのセールをやめると、一時的に売上が落ちる可能性があります。まずは常連客向けに「割引の代わりの特典」として内覧会や先行案内を始め、反応を見ながら値引きの比率を下げていくのが現実的です。


10. まとめ:Amazonに頼らないネット販売は「関係づくり」から

まとめ

  • ブルーミングデールズは、Amazonの強み(安さ・速さ・品数)の土俵では戦わず、2026年も2ケタ成長を続けている
  • 「ここでしか買えない品ぞろえ」が出発点。新しいブランドはネットで試してから店に並べる
  • ネットでもスタイリストや販売員が接客し、「誰から買うか」で選ばれている
  • 実店舗はネット販売のライバルではなく、信頼を生むエンジンになっている
  • 値引きの代わりに体験を提供し、値引き販売を大きく減らした
  • 見せ方や価格の主導権を持てる販路で売ることが、商品の価値を守る

ブルーミングデールズは巨大な百貨店ですが、やっていることは「よい商品を選び、人が接客し、常連客を大事にする」という、商売の基本そのものです。むしろ、店主の顔が見える中小企業のほうが取り入れやすい考え方といえます。まずは自社の商品を「Amazonでも買える商品」と「ここでしか買えない商品」に仕分けるところから始めてみてください。

Amazonに勝つ必要はありません。Amazonには出せない「あなたの店らしさ」をネットで伝えれば、価格以外で選ばれる店になれます。

参考リンク

※既存店売上の伸び率は、メイシーズ社が公表する「自社販売+ライセンス売場+外部出品」を合計したベースの数値です。ブルーミングデールズは単体の売上金額を公表していないため、伸び率のみを掲載しています。
※ネット販売比率38%は、2026年のWWDのインタビューで同社幹部が示した数値です。
※ドル建ての金額は1ドル=150円で換算した目安です。
※日本のEC化率は経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」の物販系分野(2024年)の数値です。
※Amazonの販売手数料はカテゴリーや価格帯によって異なり、改定されることがあります。最新の料率はAmazonセラーセントラルでご確認ください。
※ブルーミングデールズの店舗数は2026年春時点の報道に基づきます。

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