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日本国内データセンターの棟数・面積はなぜ確定できないのか

「日本のデータセンターは全国で何棟あって、面積はどれくらいなのか」。これを調べ始めると、たいてい途中で手が止まります。ある資料には510棟と書いてあり、別の一覧には256件、企業の発表には160拠点と出てくる。どれも間違いではないのに、数字が噛み合いません。

理由ははっきりしています。国内のデータセンターの総数と総面積を、同じ基準で継続的に集計して公表している主体が存在しないからです。政府の資料は調査会社の推計を引用し、業界団体の一覧は各社の自己申告で、Amazon・Microsoft・Googleは物理施設の数も面積も出していません。

今回は、経済産業省の会議資料、日本データセンター協会の公開一覧、各社の公式発表を突き合わせて、どこまで分かっていて、どこから先は分からないのかを切り分けます。数字を並べるだけでなく、その数字が何を数えたものかを一緒に書いていくので、社内資料や記事に転記するときの判断材料にしてください。

この記事でわかること

  • 全国のデータセンター棟数・面積について、公的資料で確認できる基準値
  • 47都道府県別の掲載件数と、面積が記載されている分の合計
  • NTT・Amazon・Microsoft・Googleが公表している情報と、公表していない情報
  • 「棟数」「リージョン」「ゾーン」「延床」「サーバールーム」の違い
  • 資料に書かれた面積を、総面積と誤解しないための読み方
  • 目的別に、どの数字を使えばいいかの判断基準

先に結論

  • 国内の総棟数・総面積を同一基準で示した最新の公的統計はない。基準値は2023年時点の510棟・サーバールーム面積1,679,910㎡
  • Amazon・Microsoft・Googleは、国内の物理施設数も総面積も公表していない。リージョン数やゾーン数を施設数として代用することはできない
  • 都道府県別・会社別は日本データセンター協会の公開一覧の集計(256行、面積記載179行、合計663,729.83㎡)が使えるが、これは全国の総量ではない


1. 結論:日本のデータセンターの総数・総面積は公表されていない

最初に結論を書きます。2026年11月時点で、47都道府県別・会社別の「国内すべてのデータセンターの施設数と総面積」を、同一基準で確定できる無料公開統計は見つかりませんでした。これは調査の手抜きではなく、そもそも存在しないから取れない、という種類の未確認です。

なぜそうなるのか。データセンターの統計は、大きく3つの発行主体から出てきます。それぞれ目的が違うため、数える対象も時点もバラバラです。

発行主体代表的な資料何を数えているか限界
政府経済産業省の有識者会合資料調査会社の推計に基づく地域別の棟数・サーバールーム面積最新は2023年値。悉皆調査ではない
業界団体日本データセンター協会の公開一覧会員各社の自己申告による施設情報未掲載の事業者・施設がある。面積の空欄も多い
事業者各社の公式発表・IR資料自社サービス拠点、リージョン、投資計画など物理棟数・総面積は開示されないことが多い

この3つを足し算しても、総数にはなりません。政府の数字は2023年で止まっており、業界団体の一覧は会員の自己申告で、事業者の発表は自社分だけです。「足せば総量になる」と思って足すと、だいたい二重計上か取りこぼしになります。

補足:この記事で扱う「面積」の範囲

以降の面積は、特に断りのない限り「サーバールーム面積」です。建物全体の延床面積とは違い、電源室・空調室・事務室・共用部を含みません。同じ施設でも両者は数倍違うことがあるため、延床面積とサーバールーム面積を並べて比較すると結論を誤ります。

総数がないなら、複数の数字を並べて「どれが何を数えたものか」を説明するほうが、1つの数字を断定するより信頼されます。


2. 数字が食い違う原因は「数え方」の違い

資料を読み比べる前に、用語を揃えておきます。同じ「データセンター数」「面積」でも、指している対象が違うからです。

指標意味比較するときの注意
棟数物理的な建物の数1棟を複数の事業者が利用する場合がある
サイト・キャンパス数敷地・事業拠点の数1キャンパスに複数棟ある場合がある
リージョン数クラウドの地域単位建物の数ではない
AZ・ゾーン数クラウドの障害分離単位1AZは複数のデータセンターで構成される
敷地面積土地の面積未建設の増設用地を含む場合がある
延床面積建物各階の床面積の合計電源・空調・事務室を含む
サーバールーム面積サーバーを設置する室の面積延床面積より対象が狭い

特に間違えやすいのが、クラウドの「リージョン」と「AZ(アベイラビリティゾーン)」です。AWSはAZを「1つ以上の独立したデータセンターから構成される」と定義しています。つまり「東京リージョンに4AZある」は「4棟ある」という意味ではありません。1つのAZが複数棟で成り立つことも、複数社の施設を借りて構成されることもあります。

仕組み:なぜ公表値が施設数に直結しないのか

クラウド事業者は「障害時の影響範囲」を設計単位としてリージョンとAZを公表しています。物理的な建物の構成や住所、面積は競争上もセキュリティ上も開示する必要がないため、公開情報から棟数を逆算することはできません。これは情報が出ていないというより、出す設計になっていないという話です。

もう1つ、面積の比較で必ず起きるのが「延床面積」と「サーバールーム面積」の混同です。後述しますが、ある施設では総床面積が約35,000㎡でサーバールーム面積が約8,000㎡でした。延床で並べた比較とサーバールームで並べた比較では、順位が入れ替わります。


3. 全国の基準値は2023年で510棟・約168万㎡

全国規模で唯一、地域別の内訳まで確認できるのが経済産業省の有識者会合資料です。ここには2023年の地域別データセンター棟数とサーバールーム面積が掲載されています。出典は富士キメラ総研『データセンタービジネス市場調査総覧 2024年版』などの民間調査で、政府が全施設を直接調べた数字ではありません。

地域棟数棟数構成比サーバールーム面積面積構成比
北海道16棟3%17,290㎡1%
東北40棟8%25,590㎡2%
関東194棟38%1,070,450㎡64%
中部78棟15%69,150㎡4%
関西84棟16%411,550㎡24%
中国・四国49棟10%37,920㎡2%
九州・沖縄49棟10%47,960㎡3%
全国510棟100%1,679,910㎡100%

この表で押さえるべきは、棟数の偏りより面積の偏りです。関東と関西を合わせると278棟で、全国の約55%に過ぎません。ところが面積では1,482,000㎡、実に約88%を占めます。地方にも施設はあるけれど、面積ベースでは大規模施設が首都圏と関西に集中している、という構造が読み取れます。総務省の2025年版情報通信白書も、2023年時点で国内データセンターの約90%が面積換算で関東・関西に立地すると説明しています。

注意:この数字は2026年の現在値ではない

510棟・1,679,910㎡は2023年時点の値です。2024年以降、京阪奈OSK11の開設、印西NRT14の稼働、苫小牧の開業など大型案件が続いているため、現在はこれより増えている可能性が高いです。ただし、増加分を公的資料で積み上げる手段がないため、本記事でも「2026年の総数」として提示はしません。

なお、面積の内訳を見ると、関東は1棟あたり平均約5,518㎡、中部は約886㎡です。同じ「データセンター1棟」でも規模が一桁違うため、棟数の比較だけでは市場規模は測れません。

全国値を1つ挙げるなら510棟・約168万㎡。ただし「2023年の推計値」という但し書きが必須です。

4. 47都道府県別の掲載件数と面積

都道府県別の内訳は、日本データセンター協会(JDCC)の公開一覧を使いました。2026年11月7日に取得し、全掲載行をプログラムで集計しています。一覧にはDC名・所在地・会社名・設置年度・サーバー室面積などが載っていますが、協会自身が「各社の自己申告に基づき、内容を保証するものではない」と明記しています。

読むときの前提は3つです。掲載件数は一覧の行数であり物理棟数ではありません。面積は記載があった行だけの合計で、空欄は推定していません。掲載0件は、その県に施設がないという意味ではありません。

都道府県掲載件数(行)面積記載(行)記載分サーバー室面積(㎡)
北海道879,234.5
青森県10—
岩手県10—
宮城県41560
秋田県10—
山形県10—
福島県20—
茨城県10—
栃木県21755
群馬県8632,073
埼玉県426,229
千葉県13935,506.68
東京都8467344,813
神奈川県16944,855
新潟県21728
富山県311,740
石川県11900
福井県00—
山梨県211,600
長野県531,491
岐阜県543,363
静岡県112,187
愛知県9817,360
三重県11230
滋賀県00—
京都府431,550.65
大阪府3828103,509
兵庫県6618,648
奈良県00—
和歌山県10—
鳥取県00—
島根県111,500
岡山県632,328
広島県449,940
山口県00—
徳島県00—
香川県225,765
愛媛県11300
高知県11517
福岡県936,247
佐賀県00—
長崎県00—
熊本県00—
大分県11770
宮崎県00—
鹿児島県10—
沖縄県112,292
都道府県を特定できない掲載項目526,738
合計256179663,729.83

東京都の84行・344,813㎡、大阪府の38行・103,509㎡が突出しています。次いで神奈川県、千葉県、群馬県、兵庫県、愛知県という並びで、上位は首都圏と関西に集中します。政府資料の2023年値と同じ構造です。

ただし、この表を「各県の総量」と呼ぶことはできません。分かりやすい反例が京都府です。JDCC掲載分の京都府は3行・1,550.65㎡ですが、NTTデータグループは2026年4月にサーバールーム面積10,900㎡の京阪奈OSK11を開設しています。1施設だけで、この表の京都府合計を軽く超えます。

さらにNTTグループは47都道府県すべてにデータセンターを展開すると公表しています。掲載0件の福井県・滋賀県・奈良県・鳥取県・山口県・徳島県・佐賀県・長崎県・熊本県・宮崎県にも、実在する施設はあります。

補足:この表の正しいタイトルの付け方

社内資料や記事に転記するときは「都道府県別データセンター数・面積」ではなく、「日本データセンター協会公開一覧の掲載件数・面積記載分合計(2026年11月7日取得)」と書いてください。タイトルを短くすると、必ず総量だと誤読されます。

この表は「県別の総量」ではなく「公開一覧に載っている分の集計」。ここを取り違えると、京都府の例ですぐ崩れます。


5. NTT・Amazon・Microsoft・Googleは何を公表しているか

ここが今回の調査で最も重要な部分です。結論から言うと、ハイパースケーラー3社(Amazon・Microsoft・Google)は、国内の物理施設数も総面積も公表していません。公表されているのはリージョン数・ゾーン数といった論理的な区切りと、投資額の計画です。

会社・グループ国内の拠点・施設で確認できた情報国内総面積注意点
NTTグループ47都道府県、160拠点以上同一範囲では確認できず2026年4月公表。グループ全体の数字
NTTデータ(国内事業)2025年4月の公式記事で13か所延床約60万㎡、DC利用可能面積約13万㎡(2025年3月の説明会報道)拠点数と面積の資料・時点が異なる
Microsoft/Azure2リージョン、計6AZ確認できず2施設・6棟という意味ではない
Amazon/AWS2リージョン、計7AZ(東京4、大阪3)確認できず1AZは複数棟で構成される
Google自社DC所在地一覧では国内1地域(千葉県印西市)。Google Cloudは2リージョン・6ゾーン確認できず印西1地域=国内1棟ではない
Equinix公式会社紹介で東京14拠点・大阪4拠点、計18拠点確認できずJDCC掲載件数とは異なる
アット東京公式施設一覧で国内13か所統一した合計は非公表個別施設の総床面積は公表
ソフトバンク公式サービスページで国内17か所確認できず事業再編前の名称との合算に注意
MCデジタル・リアルティ施設紹介で7棟の面積を確認。2026年10月発表ではKIX15完成時に国内10施設確認できた7棟で161,480㎡(延床)7棟は部分集合。10施設は将来値

NTTグループ:拠点数は出るが、面積は出ない

NTTグループは2026年4月27日、全国47都道府県に160拠点以上を展開すると発表しました。同時に、国内データセンターのIT電力容量を現状の約300MWから2033年度に約1GWへ拡張する計画も示しています。しかし、この発表には160拠点に対応する総敷地面積・総延床面積・総サーバールーム面積が含まれていません。

NTTデータ単体に近い範囲では、2025年4月30日の公式記事に国内13か所とあります。一方、2025年3月の説明会報道では「11拠点、延床面積60万㎡、DC利用可能面積13万㎡、電力容量117MW」と報じられており、拠点数が一致しません。対象範囲や計画施設の算入が違うとみられますが、完全には照合できないため、「13施設で60万㎡」という一組の確定値としては扱いません。

Microsoft:2リージョン・6AZ。投資額は面積ではない

Azureの公式リージョン一覧では、Japan Eastが東京・埼玉、Japan Westが大阪に位置し、それぞれ3AZです。合計2リージョン・6AZですが、これは物理的な棟数でも面積でもありません。

Microsoftは2026〜2029年に日本へ100億ドル(発表時換算で約1兆6,000億円)を投資する計画を公表しています。この中にはさくらインターネット、ソフトバンクとの国内AIインフラ協業も含まれます。投資額を建設費とみなしたり、協業先の施設面積をMicrosoft所有分に加えたりすることはできません。

Amazon(AWS):東京4AZ・大阪3AZ。7AZは7棟ではない

AWSの公式ドキュメントでは、東京リージョンに4AZ、大阪リージョンに3AZが確認できます。ただしAZの定義は「1つ以上の独立したデータセンターから構成される障害分離単位」です。7AZを7棟と数えることはできません。国内全施設の棟数・延床面積・サーバールーム面積を確定できる公式資料は見つかりませんでした。

Google:印西の1地域と、クラウドの2リージョンは別物

Googleの自社データセンター公式所在地一覧では、日本の掲載地域は千葉県印西市の1件です。ただし一覧自身が「1地域に複数のサイトが含まれ得る」と注記しています。確認できるのは公表所在地が1地域ということで、国内1棟という意味ではありません。印西の紹介ページには2023年の開設が示されていますが、敷地・延床・サーバールームの面積は確認できませんでした。

これとは別に、Google Cloudには東京(asia-northeast1)と大阪(asia-northeast2)があり、それぞれ3ゾーンです。自社DCの所在地一覧とクラウドのリージョン一覧は別の資料なので、足して施設数にすることはできません。

重要な分岐点:リージョン数を施設数として使うか

「Microsoftは日本に2つ、AWSは2つ、Googleは1つ、合計5施設」という書き方をたまに見かけますが、これは誤りです。リージョンはサービス提供の地域単位で、その中に複数のAZ、さらに複数の物理棟が入ります。施設数の代用にはできません。どうしても数を出す必要があるなら「リージョンベースで2社が2地域ずつ」と、単位を明示して書いてください。

ハイパースケーラーは「何棟か」を出していない。だから「分からない」と書くのが、調べた結果として一番正確です。


6. 会社別の掲載件数とサーバー室面積

同じJDCC一覧を、掲載会社名ごとに集計したものが下の表です。全国63区分・256行になります。実際の保有総数ではなく、あくまで掲載範囲の比較表として読んでください。会社名は読みやすさのため一部短縮していますが、親会社グループへの名寄せはしていません。

会社・掲載グループ名掲載件数(行)面積記載(行)記載分サーバー室面積(㎡)
NTT東日本(東日本電信電話)280—
富士通181874,663
NTTドコモビジネス181865,188
エクイニクス・ジャパン171776,900
NTTデータグループ1414127,241
日立製作所100—
KDDI9944,641
TISI9414,115
MCデジタル・リアルティ80—
アット東京7574,078
SCSK6620,023
ソフトバンク6413,044
NTTスマートコネクト6512,110
IDCフロンティア60—
ブロードバンドタワー5510,883
三菱電機インフォメーションネットワーク558,875
さくらインターネット558,604.5
野村総合研究所3316,570
セコムトラストシステムズ3310,500
日鉄ソリューションズ337,800
その他43区分(IIJ・STNet・オプテージ・中部テレコミュニケーションなど)合計に含む——
全63区分合計256179663,729.83

面積の記載分では、NTTデータグループの127,241㎡、エクイニクス・ジャパンの76,900㎡、富士通の74,663㎡、アット東京の74,078㎡、NTTドコモビジネスの65,188㎡が上位です。ただしこれは「一覧に面積を開示した量」の比較でもあります。面積未記載の事業者が大規模施設を持っていても、この表には反映されません。国内シェアの順位表として使うのは危険です。

もう1つ、掲載件数と実際の展開には開きがあります。アット東京はJDCC掲載7行に対して公式施設一覧は13か所、ソフトバンクはJDCC掲載6行に対して公式案内は17か所です。業界団体の一覧は「会員が申告した範囲」であって、各社の全展開ではありません。

なお、この一覧にAmazon・AWS、Microsoft、Googleの会社名での掲載行はありません。しかし国内に施設がないという意味ではなく、そもそも物理施設の詳細を公表していないため、自己申告の一覧に載らないというだけです。

注意:NTT各社とソフトバンク系を安易に合算しない

NTT東日本・NTTドコモビジネス・NTTデータグループ・NTTスマートコネクトは別区分で掲載されていますが、同一物理施設への入居や再編の関係を完全には排除できません。ソフトバンクとIDCフロンティアも同様です。会社別の面積を全部足して「国内実在総面積」を出すことはできない、と考えてください。


7. 施設単位で見ると面積の意味が変わる

会社別の集計より踏み込んで、個別施設の公表値を見ると、「面積」という言葉の危うさがはっきりします。

MCデジタル・リアルティ:確認できた7棟で161,480㎡

大阪と印西の施設紹介ページから、7棟の延床面積が確認できます。

施設所在地延床面積開業時期
KIX10大阪府8,271㎡—
KIX11大阪府23,155㎡—
KIX12大阪府18,334㎡2021年8月
KIX13大阪府23,432㎡2023年2月
NRT10千葉県印西市37,850㎡2021年9月
NRT12千葉県印西市27,571㎡2024年3月
NRT14千葉県印西市22,867㎡2026年4月
7棟合計—161,480㎡—

大阪4棟が73,192㎡、印西3棟が88,288㎡です。ただしこの161,480㎡は国内全保有施設の総延床面積ではありません。2026年10月の発表では、KIX15が2028年第4四半期に稼働予定で、完成時の国内ポートフォリオは10施設・約220MWになるとされています。10施設は将来値であり、現在の稼働施設数でもありません。

アット東京:同じ施設で総床面積とサーバー室面積が4.4倍違う

アット東京の中央第3センター(CC3)は、次の指標が公表されています。

CC3の指標公表値
敷地面積約8,000㎡
総床面積約35,000㎡
サーバー室面積約8,000㎡
竣工2024年5月28日
サービス開始2024年7月1日

総床面積はサーバー室面積の約4.4倍です。片方の会社を延床面積、もう片方をサーバー室面積で並べれば、事業規模の評価は軽くひっくり返ります。比較表を作る前に、必ず指標を揃えてください。

NTT・京阪奈OSK11:2026年の新規開設分

NTTデータグループは2026年4月9日、京都・京阪奈エリアで京阪奈OSK11を正式開設しました。公表値はサーバールーム面積10,900㎡、IT容量30MWです。2023年の全国統計より後の開設なので、時点を揃えずに過去の統計へ足し込むことはしていません。

ソフトバンク・苫小牧:70万㎡は将来計画の敷地面積

北海道苫小牧データセンターは2026年度開業予定で、将来的に敷地面積70万㎡、受電容量300MW超まで拡大する見込みと案内されています。この70万㎡は将来計画として示された土地の面積で、稼働中のサーバールーム面積でも完成済みの延床面積でもありません。北海道の面積合計や、ソフトバンクの総延床面積に足すことはできません。

補足:面積の数字を比べる前の3つの質問

①敷地か建物か ②延床かサーバールームか ③稼働中か将来計画か。この3点を確認するだけで、面積の比較表はかなり信用できるものになります。

「70万㎡」と聞いても、それが土地なのか建物なのか、今なのか将来なのかで意味は全く違います。


8. 目的別にどの数字を使うか

ここまでの内容を、用途別に整理します。迷ったときはこの表に戻ってください。

目的使う数字書き方の例
市場規模の概観をつかむ2023年の510棟・1,679,910㎡「経済産業省資料によると2023年時点で510棟・約168万㎡」
都道府県別の分布を見るJDCC公開一覧の全行集計「JDCC公開一覧の掲載256行、面積記載分は約66.4万㎡」
会社ごとの規模を比べる各社の公式発表「NTTグループは47都道府県・160拠点以上」
個別施設の規模を見る施設紹介ページの延床・サーバールーム面積「CC3は総床約35,000㎡、サーバー室約8,000㎡」
クラウドの可用性を説明するリージョン数・AZ/ゾーン数「AWSは東京4AZ・大阪3AZ」
国内の総量を1つに決める使える数字はない「同一基準の公表値はなく、確定できない」

一番避けたいのは、性格の違う数字を足して「日本のデータセンターは合計◯棟」と書くことです。2023年の政府推計にJDCCの掲載行を足す、NTTの160拠点にAWSの7AZを足す。どちらも一見もっともらしいですが、対象も時点も単位も違うので、出来上がった数字には意味がありません。

逆に、「分からない」と明記することには実務的な価値があります。稟議資料でも記事でも、「公表されていない」と書いてあるほうが、根拠のない推計より信頼されます。判断材料として必要なのは、数字の大きさより、その数字が何を根拠にしているかです。

足せない数字を足さない。これがこのテーマで一番大事なルールです。

2026年の最新値は公表されていないのか?

無料で確認できる範囲では、2026年時点の全国確定値は見つかりませんでした。商用調査としては富士キメラ総研の2026年版調査、IDCの『国内データセンター数/延床面積/電力キャパシティ予測、2026年~2030年』が存在します。ただし数表は非公開で、本調査では確認できていません。購入すれば参照できる可能性はありますが、数字を推定して補うことはしていません。

都道府県別で0件の県には、データセンターがない?

ありませんとは言えません。JDCC一覧は会員の自己申告に基づくもので、未掲載の施設は多数あります。実際、NTTグループは47都道府県すべてに展開していると公表しています。掲載0件は「一覧に載っていない」という意味です。

データセンターの面積は、延床とサーバールームのどちらで見るべき?

目的次第です。建物の規模や投資額を見るなら延床面積、収容力やIT設備の規模を見るならサーバールーム面積です。CC3の例のように4倍以上の差が出るので、混在させると比較が崩れます。少なくとも同じ表の中では統一してください。

日本一大きいデータセンターはどこ?

公表値だけでは決められません。施設単位で面積が公開されているケースが限られており、大規模施設でも面積を開示していない事業者があります。アット東京の中央センター(CC1)は総床面積14万㎡と公表されていますが、これはサーバー室面積ではありません。ランキングを作るには、各社への個別取材が必要になります。

まとめ

  • 国内の総棟数・総面積を同一基準で示した最新の公的統計は存在しない
  • 基準値は2023年の510棟・サーバールーム面積1,679,910㎡(政府資料)
  • 都道府県別・会社別はJDCC公開一覧の集計(256行・約66.4万㎡)が使えるが総量ではない
  • Amazon・Microsoft・Googleは物理施設数も総面積も非公表。リージョン数で代用しない
  • 面積を比べる前に、敷地か建物か、延床かサーバールームか、現在か将来かを確認する

やることは3つです。資料の数字に「いつの、何を数えた値か」を必ず添える。足せない数字は足さない。そして、非公表であることを非公表のまま書く。この3つを守れば、データセンターの規模に関する記述は、根拠のない推計より一段信頼できる記述になります。

正確な数字を1つ出すより、数字の限界を説明できるほうが、調べた人として信頼されます。

参考リンク

※本記事の数値は、経済産業省の会議資料(2023年値)、日本データセンター協会の公開一覧(2026年11月7日取得)、各社の公式発表に基づきます。JDCC由来の数値は「掲載件数」および「面積記載分の合計」であり、国内の総施設数・総面積ではありません。構成比は原資料の丸め値をそのまま転記しています。2024年以降の新規開設分は、時点を揃えられないため既存統計に加算していません。

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