セキュリティー

音声入力はどこまで安全?Typeless・Aqua Voiceの調査と対策

音声入力ソフトからの情報漏洩TypelessのようなAI音声入力ソフトは便利ですが、「話した内容がクラウドに流れるのでは?」という不安から、使い始めをためらっている人は少なくありません。取引先の名前や仕事の下書きを声にするたびに、どこかのサーバーを通っているのかと考えると、機密情報を扱う場面では特に心配になります。

今回は、人気の音声入力ソフト「Typeless」と「Aqua Voice」のセキュリティ実態を調査した結果をもとに、音声入力ソフトの安全性の判断基準を整理します。そのうえで、Windowsで安全に使えるソフトの比較表と、今日からできる対策までまとめました。

この記事でわかること

  • 音声入力ソフトの安全性を決める判断基準
  • Typelessの仕組みと、押さえておくべきセキュリティ上の特徴
  • Aqua Voiceの認証状況(SOC 2 Type II・ISO 27001・GDPR・HIPAA)と、プライバシーモードの初期設定の落とし穴
  • Windows標準の「音声アクセス」やHandyなど、端末内処理ソフトの比較表
  • 機密情報を扱う人が今日からできる5つの対策
  • オフラインで本当に動くかを確認する方法

先に結論

  • 安全性の決め手は「音声が端末内で処理されるか」。クラウド型は認証が充実していても、送信そのものを止められない
  • Windowsなら標準の「音声アクセス」が最有力。ネット接続なしで動き、追加ソフトも不要
  • クラウド型を使うなら初期設定が命。Aqua Voiceのプライバシーモードは初期状態でオフなので、最初の入力前にオンにする
要は、「認証の数」より先に「音声を送らずに済むか」を見る、ということですね。


1. 音声入力ソフトの安全性は「どこで処理されるか」で決まる

音声入力ソフトの処理方式は、大きく分けて2つあります。

方式仕組み長所短所
クラウド型音声をサーバーへ送り、AIが文字に変換精度が高く、文章の整形も得意話した内容が端末の外に出る
端末内(ローカル)型PCの中で音声を認識音声が外に出ない精度や整形機能はクラウド型に及びやすい

仕組み:「保存しない」と「送らない」は別の話

クラウド型には「音声を保存しない(ゼロデータリテンション)」をうたう製品があります。しかし「保存しない」は「送信しない」ではありません。送信した時点で、音声は通信経路と相手事業者の管理下に入ります。保存の約束と送信の事実は、別々に確認する必要があります。

安全性を比べるときは、次の5点を軸にするのがおすすめです。

  • 音声を端末の中だけで処理するか
  • 画面の内容(文脈)を読み取って送らないか
  • 運営元が信頼できるか(国内法人・大手かどうか)
  • 中身を第三者が確認できるか(ソースコード公開・監査報告書)
  • アカウント登録が不要か
「保存しない」と「送らない」を分けて考えるだけで、ソフトの比較がしやすくなります。

2. Typelessのセキュリティはどうなっているか

Typelessは、話した内容をカーソル位置に入力できるAI音声入力ソフトです。運営は米カリフォルニア州のSimply CA LLCで、無料プランは週4,000語まで、Proは月30ドル(年払いで月12ドル)です。

調査の結果、押さえておきたい点は次のとおりです。

  • 音声と画面の文脈情報は100%クラウド処理で、AWS(us-east-2)を経由してMicrosoftやGoogleなどAI事業者へ送信される
  • プライバシーポリシーはゼロデータリテンション(事業者側で保持しない)方針を説明している
  • 一方で、第三者の開発者による解析(2026年2月、v0.9.3時点)では、URL・画面テキスト・クリップボードなど広い範囲の情報を取得できる設計が確認された
  • SOC 2は取得中、HIPAAのBAA締結について公開情報はない

注意:画面の文脈を読むタイプのソフトは、扱う情報が広い

開いている資料や画面上の文字を「文脈」として参照するタイプの音声入力は、キーボード入力以上に広い情報を扱います。音声だけでなく、画面に表示していただけの情報も対象になり得る点を理解してから使うことが大切です。

Typelessは「保存しない」と説明するクラウド型です。ただし送信そのものは利用者側では止められないため、機密情報を扱う場面では使い分けが必要です。

Typelessは「保存しない」クラウド型。機密の場面では、送らない選択肢を別に持っておくのが安心です。

3. Aqua Voiceのセキュリティはどうなっているか

Aqua VoiceはMac・Windows・iPhoneに対応するクラウド型の音声入力ソフトです。セキュリティ認証はこの分野で最上位級のそろえ方で、2026年9月23日付でGDPRとHIPAAへの対応を公式に発表しています。

項目状況
SOC 2 Type II取得済み(監査:Advantage Partners、Vanta管理のTrust Centerで開示)
ISO 27001認証取得済み
GDPR・HIPAA2026年9月23日に対応を公表
アーキテクチャクラウド専用。端末内モードはなく、話すたびに音声がサーバーへ送られる
プライバシーモード個人プランでは初期状態がオフ。オンのときは「トランスクリプトは収集されない」が、タイムスタンプなどのメタデータは収集され得る
AI学習への利用プライバシーポリシーでは言及なし(解説記事が指摘)

重要な分岐点:最初の入力の前にプライバシーモードをオンにするか

Aqua Voiceのプライバシーポリシーには、プライバシーモードがオフのとき「トランスクリプトデータをサーバーに安全に保存することがある」という記載があります。個人プランで初期状態はオフなので、設定を開かずに使い始めると、音声の文字起こしデータがサーバーに保存され得る状態になります。医療情報などHIPAA保護対象のデータを扱う場合は、BAAの締結条件をsupportに個別確認するよう公式は案内しています。

認証の充実度はクラウド型の中でも際立っています。ただし安心材料が「設定」ではなく「文書(ポリシーと監査報告)」である点は変わりません。利用者自身が設定を開きに行く必要があります。

Aqua Voiceは認証の整ったクラウド型。設定を自分で確認しに行くのが、安全に使うための条件になります。

4. Windowsで安全な音声入力ソフトの比較

前の章までの判断基準をもとに、Windowsで使える主な音声入力ソフトを比較します。

ソフト処理場所日本語料金の目安特徴
Windows 音声アクセス(Voice Access)端末内○無料(Windows 11標準)22H2以降に標準搭載。初回のみ言語ファイルをダウンロードし、以降はネット接続なしで動作
Handy端末内○無料(オープンソース)Whisperモデルを使用。音声は端末から出ず、ソースコードが公開されている
いきなりAI 音声タイピング Basic(ソースネクスト)端末内◎月495円〜(無期限版9,900円)国内メーカー製。オフライン動作・外部送信なしを公式が説明
Windows + H の音声入力クラウド(Microsoft)○無料オンライン音声認識を使用。機密用途には向かない
Typelessクラウド◎月30ドルAI整形が得意。画面の文脈情報も送信される
Aqua Voiceクラウド○月8ドル〜(解説記事調べ)認証は充実。プライバシーモードは初期オフ

補足:音声アクセスと Win + H は別機能

Windows標準の音声入力には2種類あります。「音声アクセス」は端末内処理、「Win + H」の音声入力はクラウド処理です。見た目が似ているため、機密情報を扱う場面では音声アクセス側を使うようにしてください。

機密情報を扱うなら、表の上から3つ(端末内処理)が候補になります。追加ソフトを入れずに済む音声アクセスが最有力で、精度を足したいときはHandy、日本語の使いやすさと国内サポートを取りたいときはいきなりAI Basicという並びです。

機密を扱うなら端末内処理の3つから選ぶ。迷ったら、追加ソフト不要の音声アクセスから試すのが近道です。

5. 今日からできる5つの対策

安全に使い分けるために、今日からできる対策を並べます。

対策1:まず音声アクセスを試す

設定 → アクセシビリティ → 音声認識 → 「音声アクセス」をオン(ショートカットは Win + Ctrl + S)。初回だけ日本語の言語ファイルをダウンロードするためネット接続が必要で、以降はオフラインで動作します。

対策2:オンライン音声認識をオフにしておく

設定 → プライバシーとセキュリティ → 音声 → 「オンライン音声認識」をオフにします。クラウド処理される経路を減らしておく保険です。

対策3:クラウド型を使うなら初期設定を確認する

Aqua Voiceを個人で使うなら、最初の音声入力の前に設定を開いてプライバシーモードをオンにします。どのソフトでも「初期状態で何が有効になっているか」を、使い始める前に確認する習慣が大切です。

対策4:ネットを切って動作を確認する

準備が済んだらネットを切り、音声入力ができるか試します。切った状態で動けば、少なくとも音声の認識は端末内で行われています。通信の有無はリソースモニター(resmon)でも確認できます。

対策5:機密の場面では使い分ける

顧客名や契約内容など機密を扱う場面は端末内処理のソフトに切り替え、クラウド型は一般的な文章に限定します。画面取得の多いソフトを使う日は、カメラの無効化や専用のWindowsユーザー、Windows Sandboxの活用なども有効です。

まずはネットを切って標準の音声アクセスを試すのが、いちばん安くて早い一歩です。

Windows標準の音声入力(Win + H)は安全?

Microsoftのクラウドで処理される「オンライン音声認識」を使用します。Microsoftは音声クリップの投稿を任意にしていますが、音声データ自体はクラウドに送られるため、機密情報を扱う場面では端末内処理の音声アクセスを使う方が安心です。

Handyの日本語精度は?

Whisperモデルを選べば日本語に対応します。ただしもう一つの選択肢であるParakeet V3は日本語非対応です。AIによる文章整形はなく、話し終えてから出力まで2〜5秒程度の待ち時間が発生することもあります。

Aqua Voiceは医療情報などでも使える?

2026年9月にHIPAA対応を公表しており、保護対象の医療情報を扱う場合はBAAの締結条件についてsupportへの確認を公式が案内しています。個人利用と組織利用ではプライバシーモードの制御方法も異なるため、導入前に確認するのがおすすめです。

オフラインで本当に動くか確認する方法は?

ネットを切って音声入力を試すのが最も簡単です。動作すれば端末内処理です。さらに確かめたいときは、リソースモニター(resmon)でそのソフトのネットワーク通信を確認してください。

まとめ

  • 安全性は「どこで処理されるか」で決まる。「保存しない」は「送らない」ではない
  • Windows標準の音声アクセスが最有力。オープンソースのHandyも検証可能性が高い選択肢
  • クラウド型は認証と初期設定の両方を確認してから使う。Aqua Voiceは最初の入力前にプライバシーモードをオン

やることはシンプルです。まず音声アクセスをオンにして、ネットを切った状態で話してみてください。そこで十分なら追加ソフトは不要です。足りなければHandyかいきなりAI Basicへ。クラウド型の精度が必要な場面だけ、初期設定を確認したうえで使い分ける——これが今回の結論です。

精度と安全は両立しないこともある。機密の場面だけ「送らない」選択肢に切り替えれば、音声入力をがまんする必要はありません。

参考リンク

※料金は2026年10月時点の各公式ページの表示に基づきます。Aqua VoiceのPro料金(月8ドル〜)およびプライバシーモードの挙動については、第三者による解説記事(2026年4月時点)を参照しています。94.7%という文字一致率はソースネクストの自社検証(男女9名、2026年10月実施)に基づく数値です。Typelessに関する第三者解析の内容は、同ソフトの特定バージョン(v0.9.3、2026年2月時点)時点のものです。

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