スペインから電話がかかってきたから不思議に思いました
ある日の昼過ぎ、スマホに見慣れない着信履歴が残っていました。
「+34 919180100 スペイン マドリード」
スペインに知り合いはいません。仕事で取引したこともありません。マドリードから電話がかかってくる理由が、どう考えても思い当たらない。不思議に思って調べてみたところ、これは近年急増している国際電話を使った詐欺の典型的なパターンでした。
この記事では、実際にかかってきた一本の電話をきっかけに調べた「海外からの詐欺電話の仕組み」と、固定電話・スマホそれぞれで今日からできる防ぎ方をまとめます。特に固定電話については、無料で国際電話の着信そのものを止められる公的な窓口があるので、詳しく紹介します。

そもそも、なぜスペイン? 発信者番号は「偽装できる」
最初に押さえておきたい、いちばん大事なポイントがあります。
電話に表示される発信者番号(発信元の電話番号)は、技術的に偽装できます。
電話番号は、通話の信号に「データとして乗せて送るだけ」の情報です。インターネット回線を使うIP電話(VoIP)では、発信する側が番号欄に任意の値を書き込めてしまいます。つまり画面に出ている番号は「相手が名乗っている番号」にすぎず、身元の証明にはなりません。
国内の電話会社同士の接続では、総務省の方針を受けた業界ガイドラインで発信者番号の検証ルールが定められています。しかし偽装の多くは国内の通信網を通らず海外経由で行われるため、日本の規制の枠の外にあり、技術的に止めるのが難しいのが実情です。
ですから「+34(スペイン)」と表示されていても、実際にスペインからかけているとは限りません。逆に、その番号の本来の持ち主がまったく無関係の第三者、というケースも珍しくありません。
「番号が表示されているから本物だろう」——この思い込みこそが、いちばん狙われている穴です。
国際電話詐欺のよくある手口
1. ワン切り(国際ワン切り詐欺)
1〜2コールだけ鳴らして切る手口です。着信履歴を見た人が「誰だろう」と折り返すのを狙っています。折り返し先が高額課金の番号になっていて、通話しただけで高額な請求が発生します。私のケースも、着信履歴に不在着信が1件残っているだけでした。
2. 公的機関を名乗る「不安あおり型」
国民生活センターに寄せられている相談では、警察官・検察官・総務省職員などを名乗るケースが目立ちます。
- 「あなたの電話番号が犯罪に使われている」
- 「未払いの料金がある。このままだと法的手続きに入る」
- 「詳しくは○○のアプリで話しましょう」と通話アプリへ誘導
- 最終的に電子マネーやコンビニ決済での支払いを要求
この流れに乗ってしまうと、被害額が一気に大きくなります。
3. 「生きている番号」のリスト化
意外と見落とされがちですが、一度でも応答すると、その番号は「実在して使われている番号」として名簿化される恐れがあります。すると別の詐欺グループから電話が来たり、迷惑SMSが増えたりします。
まず守るべき3つの原則
- 心当たりのない国際電話には出ない(「+」から始まる番号は要注意)
- 絶対に折り返さない(高額課金・名簿化の二重のリスク)
- 番号表示を根拠に相手を信じない(偽装されている前提で考える)
なお、かかってきた番号を個別にブロックするのは有効ですが、効果は限定的です。番号を偽装している以上、相手はいくらでも別の番号に変えられるからです。根本的には「国際電話を一括で止める」ほうが確実です。
【固定電話】国際電話不取扱受付センターで着信を無料で止める
固定電話をお使いなら、これがいちばん効果的な対策です。
国際電話不取扱受付センターとは
固定電話で国際電話を使う予定がない場合に、国際電話の発信または発着信の利用休止を申し込める窓口です。KDDI・ソフトバンク・NTT東日本・NTT西日本・NTTドコモビジネスの5社が共同で提供しています。
公式サイト:https://www.kokusai-teishi.com/
電話:0120-210-364(通話料無料)
できること
| 着信休止 | 国際電話の着信を止められます。詐欺電話対策として効くのはこちらです。 |
|---|---|
| 発信休止 | KDDI・ソフトバンク2社の国際電話の発信を止められます。それ以外の事業者の回線からの発信休止は、各事業者への問い合わせが必要です。 |
対象になる電話番号・ならない電話番号
| 対象 | 東京03・大阪06などから始まる10桁の固定電話 |
|---|---|
| 対象外 | 070・080・090から始まる11桁の携帯電話 050から始まる11桁のIP電話 |
ここは重要なポイントで、スマホは対象外です。スマホ側の対策は後述します。
申込方法は3つ
① Web申込
公式サイトのWebフォームに入力して受付完了。
② 電話申込
フリーコール0120-210-364(無料)に電話 → 自動音声応答 → 申込情報を吹き込む → 折り返し電話で確認 → 受付。
※休止したい番号そのものから電話した場合は、折り返しはありません。
③ 郵送申込
公式サイトから申込書をダウンロード → 記入 → 返送 → センター到着で受付完了。
申込時に必要な項目
- 利用休止を希望する電話番号(03・06などから始まる10桁の固定電話)
- お申込者名
- ご住所(都道府県名から)
- ご連絡先電話番号
手数料はかかりません。用意するものも多くないので、実家の固定電話などは代わりに申し込んであげるとよいと思います(※契約者本人からの申込みが原則です)。
再開したくなったら
国際電話の着信を再開する場合は電話申込のみです。0120-210-364に電話してオペレーターと話し、申込書を受け取って記入・返送する流れになります。海外とやりとりする予定ができたときは、日数に余裕をもって手続きしてください。
注意点
- 光コラボレーションのサービスを利用中の場合は、各光コラボ事業者への問い合わせになります。
- NTT東日本・NTT西日本の固定電話・ひかり電話をお使いの場合は、116(携帯からは各社のフリーダイヤル)でも国際通話の規制について相談できます。
- 引っ越しなどで番号が変わる場合は、必ずセンターに連絡を。解除漏れのまま別の方にその番号が割り当てられると、その方が国際電話を使えなくなってしまいます。
【スマホ】固定電話の制度は使えない。ではどうするか
前述のとおり、携帯電話・IP電話は国際電話不取扱受付センターの対象外です。スマホ側は次の3段構えで対応します。
1. 端末の標準機能でブロックする
iPhone:電話アプリの履歴で該当番号の「i」をタップ →「この発信者を着信拒否」
Android:電話アプリの履歴で該当番号を長押し →「ブロック」または「迷惑電話として報告」
ただし繰り返しになりますが、番号を変えられると効果がありません。「来たものを塞ぐ」対症療法だと理解しておいてください。
2. キャリアの迷惑電話対策サービスを使う
ドコモ・au・ソフトバンクとも、詐欺に使われた番号のリストを自動更新してブロックするサービスを提供しています。契約中のキャリアのマイページやアプリから確認してみてください。
3. 国際電話を一括でブロックするアプリを入れる
警察庁が推奨認定している「詐欺対策 by NTTタウンページ」などのアプリでは、国際電話番号からの着信に対して「警告表示」または「遮断」を選択できます。特殊詐欺に使われた番号のブロック機能もあります。
また、iPhoneには「不明な発信者を消音」という機能もあります。連絡先に登録がなく発信履歴にも残っていない番号を無音にする設定ですが、病院・学校・役所などからの急な連絡にも気づけなくなるので、使う場合はその点を理解したうえで有効にしてください。
【事業者向け】PBXの不正利用にも注意
企業の電話環境では、詐欺電話とは別方向のリスクもあります。社内のPBX(電話交換機)に第三者が不正侵入し、なりすまして国際電話を発信するという被害です。
DISA機能やリモート保守、転送機能を悪用されるケース、IP-PBXのセキュリティ設定が甘くインターネット経由で侵入されるケースが報告されています。発生しやすいのは土日祝や深夜早朝、大型連休・年末年始。気づかないうちに高額な国際通話料が積み上がります。
心当たりのある方は、次を確認してください。
- PBXの管理画面・保守用アカウントの初期パスワードが残っていないか
- 国際電話の発信自体が業務上必要か。不要なら発信規制をかける
- リモート保守ポートがインターネットに開いていないか
国際電話を業務で使わない事業所なら、発信休止を申し込んでおくのがいちばん確実です。
困ったとき・迷ったときの相談先
- 消費者ホットライン 188(いやや!) 最寄りの消費生活センターにつながります
- 迷惑電話対策相談センター(でんわんセンター)03-6162-1111 平日10時〜17時。総務省が実施している相談窓口です
- 国際電話不取扱受付センター 0120-210-364 固定電話の国際電話休止の申込み
すでにお金を払ってしまった場合や、個人情報を伝えてしまった場合は、時間が経つほど回復が難しくなります。ためらわず警察と消費生活センターに相談してください。
まとめ
スペインからの一本の着信をきっかけに調べてみて、あらためて感じたのは「表示された番号は信用の根拠にならない」という一点です。
- 発信者番号は偽装できる。国際経由の偽装は規制で防ぎきれていない
- 出ない・折り返さない・番号表示を信じない、が基本
- 個別ブロックは効果が限定的。国際電話の一括休止のほうが確実
- 固定電話は国際電話不取扱受付センター(0120-210-364/無料)で着信休止できる
- スマホは対象外なので、キャリアサービスや専用アプリで対応する
- 企業はPBXの不正利用による高額請求にも注意
特に、ご高齢のご家族が固定電話を使っている場合は、本人が対策するのは負担が大きいものです。まわりが代わりに手続きしてあげるのがいちばん現実的だと思います。無料ですし、手続きも難しくありません。
「不思議に思った」で終わらせず、その日のうちに設定まで済ませてしまうのがおすすめです。